kaigonoosigotoの日記

都内の高齢者施設にて施設長をやっています。若者の視点から現代の高齢者施設に切り込みます。

介護士の給料はなぜ上がらないのかを考えてみる

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介護業界って給料が安いと言われて、よく問題として取り上げられますが、問題がはっきりしているのになぜ改善されないのですか?って聞かれたりします。そこにはいろんな原因があるので、今後介護業界に入る予定の人はそこをしっかり分かった上でこの業界に入るのが良いと思います。それでは、なぜ介護士は給料が安く、かつ上がらないのかを解説していきますね。

 

◆1.給料の出どころである介護事業所の収入ってどうなっているの?

◆2.国が介護報酬を上げれば給料は上がるよね

◆3.今後の介護士の給料アップはどうなる?

◆4.介護士の経済的メリットってある?

 

◆1.給料の出どころである介護事業所の収入ってどうなっているの?

給料は事業所の収入から支払われますよね?一般的な会社では、物を売ってお金を稼いで、それが会社としての収入(売上)となります。では介護業界の収入ってどうなっているのでしょうか。高齢者施設やらデイサービスなどの事業所は、多くの収入を「介護報酬」というもので占めています。介護業界では利用者に対してサービスすると、国がお金を支払ってくれるんです。もちろん、利用者も利用料を支払いますよ。そして、介護報酬というものは、「公定価格」で決まっています。「公定価格」と聞くと難しそうですが、国の経済を調整するために国により決められた価格ってことです。ここからが大事なのですが、「公定価格」が導入されているということは、介護報酬で利益を得る介護事業所は、国が定めた介護報酬でしか料金を請求することができませんし、全てのサービスの価格はあらかじめ決められているということを意味します。福祉業界以外では、企業の製品はその企業がマーケットの状況の見ながら自由に決めますよね。高すぎたら売れないし、安すぎても、利益が出ない。そういう調整をしながら値段って決まっていくんです。しかし、福祉業界はそれができない。事業所は勝手にサービスの値段を決めることができないんです。「介護報酬が収入源となる介護事業は、利用者に請求できる額に制限があるのです。つまり、どれだけ頑張っても常に売り上げには上限があるのです。売上に上限があるのですから、利益を給料に還元できなくなる。そりゃ給料が増えないやぁ~となるわけです。

 

◆2.国が介護報酬を上げれば給料は上がるよね

売上に上限があるならば、介護報酬自体を国が上げれば良いのでは?となりますよね。単純明確、答えはそういうことです。しかし、それができない訳があります。少し小難しい話になっちゃいますが、介護報酬って医療報酬と比べると、かなり低めに設定されているんです(泣)。これには介護保険制度が生まれたことに関係があるんです。介護保険制度は、高齢者数が増えるに連れて、医療費がどんどん上がっちゃうもんだから、国の財政を圧迫してたわけです。それで、支出削減を目的にして、介護保険制度は生まれたというわけです。介護報酬は医療費による財源圧迫を回避するために生まれたということです。だから、介護報酬は価格が低めなんです(泣)。介護報酬を高くしたら、財源圧迫解消を成せないですからね。そんなわけで、介護報酬が低いから、介護士の給料も低いというわけです。これは介護士の給料が低い理由の一つですね。

さらに付け加えると、一番最初から低価格の介護報酬は年数を経るごとにさらに下がっているんです。ここはちょっと細かいので、読み飛ばしてもらってよいと思います(詳細を知りたい方もいると思うので一応書いときます)。介護報酬って3年毎に見直されるんです。2003年改定は、「マイナス2.3%」、2006改定はさらに「マイナス2.4%」の引き下げが行われてきました。2009年と2012年は、介護職員の処遇改善のためプラス改定だったのですが、2015年は「マイナス2.27%」の引き下げが行われました。処遇改善と介護サービスの充実分をプラスしても、なんやかんやで報酬を下げるから、結局マイナス4.48%になっています(トホホ・・・)。

さらに、65歳以上の高齢者の数は、2025年には「3,657万人」と予想されており、2042年に3,878万人を迎えるとされています。この高齢者の爆誕は介護保険サービスの利用者がさらに増えることを意味します。つまり、介護費が財政を圧迫することは目に見えているということです。それを防ぐために国が主導して、介護報酬の引き下げを行ない、介護費による財政圧迫を回避しようと必死なわけです。となると、今後も介護報酬を引き下げていく可能性がありますよって話です。まとめると、「介護報酬は公定価格のため上限がある」「介護報酬自体が低く設定されている」「介護報酬が下がっている」という事情があるため、介護士の給料は安くなっているわけなのですよ。

 

◆3.今後の介護士の給料アップはどうなる?

悲しいかな、今後も介護報酬が上がる見込みはないと考えています。個人的にもそうですが、関係者との意見交換でもそういう意見が多いです。ただ、取り組みはあるようです。代表的なものが「処遇改善加算」ですね。処遇改善加算って、介護職員の給料を上げるために設けられた制度なんです。平成27年度の介護報酬改定においては、雇用管理の改善や労働環境の改善の取り組みを実施する事業所を対象に、月額平均1.2万円相当を上乗せ評価する加算区分が創設されたりしています。介護報酬の引き上げが期待できなくても、介護士の雇用促進のため給料アップは検討されているようです。ただ、財源にも限りがありますから、どこまで給料が上げられるかは結構な課題だと思います。介護は国にとっては緊急の課題であるから、介護士の給料は少しずつでも上がり続けるという意見もありますが、正直そこまで楽観視できません。給料を上げなきゃいけないのは、保育士も同様ですし、介護士だけ特別扱いはされないはずです。ただ、給料アップの検討はされているということだけは言えそうです。

事業所が給料アップのためにできること

国に期待できないのであれば、事業所ごとに工夫して、経費節減に努めなければなりませんね。介護の仕事は人件費が事業所コストとしては一番上位に位置しています。人件費を削ることはサービスの質に影響してきますから、削ることは難しいです。そうすると、やはり、事業所の経費を削っていくしかありません。また、サービスをどれだけ効率よく提供できるかも重要です。僕が施設長をしている老人ホームもそこそこの規模のグループに属していますが、大きいグループになるほどこういうのって有利だと感じます。施設の福祉用品を一括購入する契約を業者と結び、備品をかなり安く調達できたり、事務などのバックオフィスを一か所に集約し、効率的に運営することで、裏方の人件費もかなりカットできます。規模が大きい施設って、結構給料が高めに設定されていたりします。うちの施設も平均年収は400万円を軽く超えますし、中間管理職になると、500万円~650万円はもらっています。介護報酬が上がらない状況を考えると、事業所が率先して経費削減、効率的運営に励んで、介護士の給料アップを図るしかなさそうですね。

 

◆4.介護士の経済的メリットってある?

介護士の給料事情を書いてきましたが、泣きたくなった方もいると思います。となると、給料的に介護士をするメリットってあるのだろうかという話になります。介護士はやりがいしか期待できないのかと思いますよね。まぁ、メリットとして上げられるのは、やはり事業所の収入が介護報酬という国からのお金ですから、収入が途絶えることがないということですね。もちろん、事業所の経営を適当にしたら、倒産することはありますよ。でも、堅実な経営を続けているならば、事業所はつぶれにくいということが言えます。収入が国からのお金ですから、景気に左右されずに運営ができるというのは大きいですよね。精神的負担も少ないですし、不況でも世の中の慌てぶりとは関係ないかのようにいつも通りに事業所の口座には一定額の振込が国からなされます。利用者を安定的に確保していく必要はありますが、それさえできれば介護報酬を安定的に受け取ることができます。普通の会社ならば、国から毎月お金を振り込まれるということなんて、あり得ませんから、その違いは大きいですよね。だから、事業所の収入が安定しているから、介護士の給料も安定しています。不況でリストラになるとかを考えなくて良いから、そういう意味ではメリットですよね。

 

介護士の給料アップにはそこまで期待できませんが、メリットもありますね。介護士は安定を求める方は良いのかなと思います。どんな仕事も一長一短ですから、よく見極めて選択すればよいと思います。それと、介護士の給料といっても、高い求人から低い求人まで他業界と同じでいろいろありますよ。うちの施設も結構給料は良いですし。なので、資格、技術、経験を身に付けて、転職を重ねるというのが給料アップには近道と言えます。安易な転職は進めませんが、人材流動性が高い介護業界は転職がマイナスとなるわけではないですから、検討はしてみると良いと思いますよ。いろんな意見はあると思いますが、高い技術を持つ介護士に対して、高い給料を出す施設もありますから、あながち悲観的になる必要はないと思います。