kaigonoosigotoの日記

都内の高齢者施設にて施設長をやっています。若者の視点から現代の高齢者施設に切り込みます。

勤続10年以上の介護福祉士に月8万円の賃上げは、ほとんどの介護士へ恩恵なし!?

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勤続10年以上の介護福祉士に月8万円の賃上げをすると話題になっていますが、実際はどうなんでしょうかね。普通に考えたら、月に8万円も給料を上げることは厳しいですよ。職員の給料額を検討している僕からすると、そんなお金どっから持ってくるんだという話です。うちの施設でもいろいろ話題になっているので、今回はこの問題について触れてみたいと思います。

 

◆1.毎月8万円の給料増ってどういうこと?

◆2.介護士ってそんな待遇が悪いの?

◆3.介護福祉士の資格取得者も増やしたい思惑

◆4.給料が増える人はほぼなし!?

 

 ◆1.毎月8万円の給料増ってどういうこと?

これは介護士不足を解決するために政府が考え出した案です。まぁ、今回に限らず、政府は何度も介護士の給料についてはテコ入れを行なってきました。

2009年度から始まって、2017年度までで4回の介護報酬改定が実施されてるんです。結果的には合計月額5.3万円に相当する改善が行われていますが、この全ての額が給与として入ってくるわけではないですよ。そんなこんなで改善はされているのですが、介護士不足は増々深刻な状況になりつつあって、2025年の団塊世代が全員75歳以上になることを考えると、介護士の増員はかなり緊急の対策が必要な問題なんです。そこで今回も給料を上げることをアピールして、介護士の数を増やそうという政府の考えです。

発表されている内容を読むと、「勤続年数10年以上の介護福祉士の賃金を、月額平均8万円引き上げられる程度の財源」(税金から徴収した1000億円程度)を用意して、「経験・技能のある職員の賃金が上がる」ように処遇改善を推進することで、「介護職員としてのキャリアパス」を持ちやすくするとあります。この施策は、「消費税率10%への引き上げに伴う介護報酬改定」の中で制度化され、2019年10月から実施されるとありますね。ざっくりとした内容はこんな感じです。とにかく介護士の給料を上げますよって政府がアピールしているのです。

 

◆2.介護士ってそんな待遇が悪いの?

政府が月8万円給料を上げてくれると急に言い出したら、ものすごく嬉しいですよね。あり得ないというか、天にも登る気持ちになります。でも、そんなに介護士って待遇悪いのか?はい、悪いですね。だから、人手が不足してるんです。

厚生労働省が発表している給料データを見ると、介護施設介護員の月給は21万8,900円、ホームヘルパーは21万8,200円と全産業の平均より約10万円低い状況にあります(汗)。

他業界に比べて、かなり低めな給料事情があるため、政府は給料を上げて人材確保に努めているんです。でも、給料を上げる対象が非常に限定的で、「勤続10年以上の介護福祉士」という条件が付いています。これって結構、きつい条件です。少なくても、僕は対象ではりません。介護福祉士になってまだ4年くらいですから。

介護離職を防ぎたいという政府

月額8万円の賃上げが提案された背景には、「介護離職」の問題があるようですね。調べてみたら、日本で1年間の内に介護離職する人って10万人にもなるそうです。その中でも女性は8割を占めるという。年齢は50代~60代前半でまだまだ働ける人達が高齢の家族を介護しなきゃいけなくて、離職しているようです。確かにこれは深刻な問題です。

デイサービスや施設等に家族を預けることができれば、仕事を続けることもできますが、介護士不足により、サービス提供側にも利用者の受け入れは限界があります。なんとか、仕事と介護の両立ができれば良いのですが、介護士不足が解消されれば少しは良くなる問題かもしれませんね。

 

◆3.介護福祉士の資格取得者も増やしたい思惑

福祉業界の中の王様資格だった介護福祉士は、かなり受験者が減少しています。2015年だと、介護福祉士の登録者数は139万8,315人です。といっても、実際に介護士として働いている人は78万2,930人にしかなりません。資格取得者の4割は介護現場にいないのです。2016年度の介護福祉士試験受験者数は、7万6,323人ですが、これは前年度の約半分でしかありません。介護福祉士の魅力が薄くなっている風潮がある中で、介護福祉士試験の受験資格として実務者研修450時間受講が必須になったため、受験者がさらに減少する事態となりました。

受験資格を得るために使う時間は増えても、手当は変わらないですし、それでは資格取得のモチベーションは下がりますよね。福祉業界は、専門技術を持った介護士を養成したがっていますが、実際は成り手が激減しているため、対策しようがない状況です。そういった問題もあり、今回の賃上げを検討するに至ったという流れがあります。

 

◆4.給料が増える人はほぼなし!?

この賃上げに関して、1,000億円の税金が財源となるようです。でも、この賃上げ、かなり問題点も多いですよ。というのも、賃上げの対象者って、ほとんどの介護士には関係のない話です。支給対象は勤続10年以上の介護士です。厚労省発表データを見ると、介護福祉士の平均勤続年数は6年ですから、勤続10年の介護福祉士ってかなり数が少ないことが分かります。介護士ってちょいちょい転職したりしますからね。同じ施設で10年以上勤務している人って多くはないと思います。そして、さらに問題なのが、8万円の支給額全てが介護福祉士に支給される保証って全くないんです。この月8万円の賃上げの仕組みを説明しますと、国から支給されたお金はまず介護事業所に入るようになります。そして、介護士に支給されるべきお金は、事業所が判断して、各介護福祉士にどれくらい配分するかが決定するのです。つまり、給料が上がるかは事業判断なんです。これ、施設長や理事長が介護士の給料を増やすよりも、設備投資に回すと判断したらそっちにお金が流れるという、事業所にとっては美味しい制度です。こんなザルな取り組み、意味あるんですかね。介護士の給料を上げると言っている以上はしっかり現場介護士の給料が上がるように国が保証しないと。事業所がお金の配分を決めて良いなんて、ばかげてますよね。

介護士全体に給料増を

これから40万人の介護士が不足しますから、人材確保のために給料増は必須です。しかし、給料を上げることは難しい問題です。日本も財源が厳しいですから、介護士の給料に回すお金もあまりない状況。今回の月8万円の賃上げの恩恵を受けられる人は、勤続年数10年以上の人が対象なので、介護現場のリーダー的存在の人が多いと思います。これだと魅力ないですよね。新人さんは変わらず給料が低いから、介護業界で就職しようと思わない。全体的に給料が増える取り組みが必要です。人材確保に手っ取り早いのが給料アップですからね。どこかしらで、介護士が生活できて、家族を養っていけるくらいの給料を出さないと、この問題は解決しない、介護離職も解決しませんね。

 

 介護福祉士の給料を毎月8万円上げるというニュースを見た時は、かなり嬉しかったです。これで福祉業界も変わるのではないか、優秀な人材がくるのではないかと。でも、勤続10年以上の介護福祉士が対象ですから、それを知ってかなりガクッとなりました。ほぼ対象者いないじゃんと・・・。うちの施設で言ったら、対象者は10人くらいいたと思います。幸い、うちの施設は離職率が低いので、対象者がたくさんいます。この制度が実際化される時にはさらに対象者が増えていると思います。月8万円支給されたら、そのまま介護士さんの給料に毎月8万円を突っ込んでやろうと思っています。理事会で待ったがかかるかもしれませんが、介護士さんの給料を上げるのは施設長の仕事でもあるので、ここは戦うつもりです。8万円の賃上げ、どうなることやら。。。