kaigonoosigotoの日記

都内の高齢者施設にて施設長をやっています。若者の視点から現代の高齢者施設に切り込みます。

介護現場の理想と現実 真実を簡単に話します

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高齢者の役に立ちたい」。その思いは介護士になるきっかけとして多くの人が抱くものです。僕はこの業界に入る時にその思いは全くなかったですが、現に施設長としていろんな介護士に触れあっているとそういう思いを持って、頑張っている人達がいることが分かります。

これから介護業界に入る人達で困っている人を助けたいという思いにあふれている方もいると思います。今回はそういった方に介護業界に抱きやすい理想とリアルな取り組みをご紹介できたらと思っています。

 

◆1.介護業界の理想ってどんな感じ?

◆2.現実はこんな感じ

◆3.それでも楽しい事の方が多いですよ

 

◆1.介護業界の理想ってどんな感じ?

介護業務は高齢者の昔話に耳を傾けたり、楽しくお話をしたりして、高齢者の残りの人生を充実したものにする仕事。この理想を抱いて、専門学校に進学し、介護業界に入ってくる方というのは多いです。もちろん、こうした介護士の姿は事実としてありますよ。

人は高齢になるにつれて人生の希望を失っていくものです。会社勤めや子育ても終わり、人生の張り合いが少なくなると同時に肉体的衰えが始まり、それにつられる形で精神的にも希望を失っていくというものです。そういった高齢者に精神的ケアをすることが非常に大切なことですし、そうありたいものでもあります。介護士の仕事は高齢者の日常生活をサポートすることですが、食事、排泄、入浴といったものに特化しているだけで良いのでしょうか。高齢者の命を一日でも伸ばすためだけに安全な施設運営をするのでは、高齢者の生きがいはどこにいってしまうのでしょうか。安全管理の名の下、高齢者の生活に限界を設定し、こちらで徹底的に管理するのは良いことなのでしょうか。利用者が希望することは可能な範囲で叶えてあげることも介護士として重要な仕事なのではないかなと思っています。少々の風邪や体調不良などの状況であっても、外出したり、散歩をしたいという希望を可能な範囲で叶え、その結果、利用者が体調不良になってしまったり、ケガをしてしまったりすることもあるかもしれません。しかし、利用者が満足した生をそれで生きられるならば良いではないかと僕は思っています。現実においては、利用者の希望を全て許諾することはできませんが、そういう利用者の希望、願いを成して差し上げたいという方に介護士を目指してほしいなと思っています。

 

◆2.現実はこんな感じ

介護業界に理想を抱いて、介護士になっても実際の業務に失望してしまう人も多いことでしょう。施設によって支援内容は異なってきますし、大部分の施設は今から書く内容に沿って支援をしているのではないかなと思いますね。

◆施設は利用者の健康・安全が第一

施設の目的は、あくまで「利用者が健康的に安全に毎日を送ることができる」場所を提供するというものです。そのため、利用者の命を守るため、過剰な安全管理、行き過ぎた延命措置のようなものがとられています。これを批判しているわけではないですよ。ただ、これは管理される側(利用者)からしたらたまらないだろうなと思います。もちろん、利用者の安全を守ることは介護士の義務ですし、利用者が無理しないようにセーブすることも必要です。しかし、利用者の安全管理は利用者の生き甲斐を奪っていませんか?利用者のためと言いながら、自分のため、施設のためにしていませんか?と言いたくなります。施設は利用者からお金を支払ってもらって、サービスを提供していますから、利用者にケガや介護ミスにより万が一のことがないように細心の注意を払っています。僕がいる施設でも安全管理は徹底していますし、利用者の体調管理も細心の注意を払っています。

しかし、利用者の希望もなるべく叶えるようにしています。利用者の希望を安全管理の面で無理だとか、職員の数が足りないといった施設側の理由で拒否することがないようにしています。施設は監獄だと言う利用者もいるようですが、施設内では自由はほとんどないといった方がいいかもしれません。好きな時間に起きて、好きな食事することもできず、すべきことは全て時間で決められています。好きな場所に行くこともできませんし、希望することを自由にはできない場合があります。こんな中で人生を長く過ごして何が楽しいのでしょうか。そりゃ、利用者もうつ病になりますよ(実際に利用者から言われた言葉です)。

でも、介護施設って、利用者の安全管理が第一ですから、利用者の行動を徹底的に制限しているんです。利用者の希望はなかなか叶いません。だって、利用者の希望を叶えて、利用者に何かあったら、施設の責任になるからです。今は家族もいろいろ言ってきますし、利用者がケガでもしたら、損害賠償請求がきたりします。隙あらばクレームをしてくる家族がいる限り、施設は安全策を取らざるを得なくなります。

 

◆3.それでも楽しい事の方が多いですよ

介護現場の実態を様々書くと「ひどいな~」と感じる方がいるかもしれません。また、これから介護士を目指す方も希望を失うかもしれません。でも、そうじゃないですよと言いたい。もちろん、施設は安全管理が第一ですから、過剰に利用者の健康管理、安全管理をしてしまうこともあります。しかし、それは利用者の生活を預かっている以上、仕方がないことと分かってほしい。

もし、この記事を読んで下さる方は介護士をするならば、その実態を分かった上で自分に何ができるのかを考えて行動してほしい。限られた環境の中でそれでも利用者が楽しく暮らせるように工夫してみてほしいです。僕の施設ではなるべく利用者の方に行動の制限をかけないで過ごしてもらっています。外出をしたい思いや散歩をしたい思いをなるべく叶えます。普通、体調が優れなかったり、歩行に不安がある場合は外出禁止にしたり、すぐに車いすにしたりします。僕の施設ではそれはやりません。その代わり、家族の方には利用者の希望を叶えたい、その代わりケガをしたりする可能性も否定できない、もちろん、安全管理は徹底しますと伝え、納得してもらいます。万が一の時は僕が施設長として責任をとるので、現場の人達には利用者のためになる介護をしてほしいと伝えています。施設内にこもっているよりも、外に出た方が利用者・職員共にリフレッシュできるから良いのですが、他施設さんではまずこのようなことは行っていないところがほとんどです。他では安全管理の名の下、外には出さないだろうなと思います。利用者に何かあったら、クレームや損害賠償の嵐ですからね。余計な仕事はつくりたくないですからね。

 

いろいろ書きましたが、これから介護士になられる方は現実だ、実態だなんて、気にしすぎることはないと思っています。もちろん、安全管理を無視した介護には反対です。しかし、利用者を無視した介護に僕は賛同できません。

結局は現場での判断が常に求められるのですが、介護に希望を持って、利用者のために働きたい方であるならば、その判断はできると思います。介護は利用者の命を守るものであり、一つの介護ミスが利用者の命を奪います。理想と現実の間で常に調整が必要で、それを判断できる指導者が現場にいてこそ、理想的な介護ができるとものだと思います。利用者のために介護したい人が早く現場リーダーや施設長になれればそういったことが可能になるのだと思います。一緒に頑張りましょう!